犬の神様に会いに、愛犬と山を登る一日

東京の西の端に、犬を「お連れさま」と呼ぶ山がある。 御岳山。ケーブルカーには年間およそ一万頭の犬が乗り、山頂の神社には、犬の祖先とされるオオカミが祀られている。人々はその神様を、親しみを込めて「おいぬ様」と呼んできた。 都心の喧騒から、およそ九十分。リードの先を歩くうちの子と、同じ道を、同じ速さで登る。それだけのことが、こんなに満ち足りているなんて。 --- リードのまま、山の上へ 御岳山の旅は、日本一やさしいケーブルカーから始まる。ケージは要らない。リードのまま、うちの子と並んで乗れる。 窓の外を、杉の木立が静かに流れていく。標高差およそ四百メートル、六分間の登り道。足元でおすわりしたまま、耳だけ忙しいうちの子がいる。 --- おいぬ様に、会いに行く 山上の集落を抜け、石段をのぼった先に、武蔵御嶽神社は鎮座している。祀られているのは大口真神。ニホンオオカミを神格化した、いわば犬たちの遠いご先祖様だ。 ここでは愛犬の健康祈願ができる。社殿の前で、うちの子と並んで手を合わせる。「今年も、元気でいてね」。それだけの願いごとが、山の空気の中では、ずいぶん大きなことに思える。 --- 苔の谷を、ならんで歩く 神社から足をのばして、ロックガーデンへ。苔むした岩のあいだを清流が縫う、およそ一・五キロの沢沿いの道だ。 夏でもひんやりと涼しく、水の音だけが続く。岩場や渡渉もあるから、小さな子は時々抱っこで。濡れた鼻先が、心なしか誇らしげに見える。 --- 渓谷のデッキで、遅めの昼を 山を下りたら、御岳渓谷を見下ろすオープンデッキへ。本格ドイツ料理の店に、看板犬が迎えてくれる。 多摩川の流れを眼下に、遅めの昼ごはん。歩ききった足の裏と、少し疲れて丸くなったうちの子。旅のいちばんいい時間は、たぶんこういう時だ。 --- 泊まるという、ぜいたく 日帰りでも十分。でも、多摩川を望む温泉宿にはドッグラン付きの客室がある。 山の一日の終わりに、うちの子が部屋の窓から川を眺めている。その背中を見ながら湯上がりの一杯。帰らない、という選択肢も悪くない。 --- 次の週末は、高尾へ 御岳山が「犬の神様の山」なら、高尾山は「犬連れ登山の入り口」だ。都心から一時間、リードで頂上まで歩ける定番の道。山頂の茶屋には、ペット同伴席で名物のとろろ蕎麦がある。 ふたつの山は、どちらも東京。犬と登れる山が、こんなに近くにあった。 --- おいぬ様参りの一日 9:00 ─ 御嶽駅に着く。バスとケーブルカーを乗り継いで、山の上へ。 10:00 ─ 山上集落を散歩しながら、武蔵御嶽神社へ。おいぬ様に、健康祈願。 11:30 ─ ロックガーデンをひとまわり。苔と清流の道を、ゆっくり一時間半。 14:00 ─ 山を下りて、御岳渓谷のデッキで遅めの昼ごはん。 16:00 ─ 多摩川沿いをすこし散歩して、帰路へ。泊まる…

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