鳥居の前で、ふと立ち止まる。この先へ、うちの子も入っていいのだろうか。そんな迷いに、まっすぐ応えてくれる場所が、日本のあちこちにある。犬を神様の使いとして祀る山の上の社。犬のための手水舎を備えた高原の社。月に二度、ペットの幸せを祈祷してくれる寺。今回は、東京の山頂から出雲の杜まで、愛犬と一緒に手を合わせられる六つの社寺をたずねる。次の旅の行き先に、ひとつ加えてみてほしい。 --- 山の上の、おいぬ様 — 武蔵御嶽神社 東京・御岳山の頂に鎮座する武蔵御嶽神社は、ニホンオオカミを「おいぬ様」として祀る、犬連れ参拝の聖地といっていい。ケーブルカーには犬もそのまま乗れて、山上の集落を抜けた先、長い石段の上に社殿が待っている。ここでは愛犬のための祈願も受けられる。祈祷殿で名前を呼ばれ、頭を垂れるうちの子の姿は、きっと忘れられない一枚になる。 --- 犬とくぐる、茅の輪 — 秩父今宮神社 埼玉・秩父の街なかに、樹齢千年を超える大欅が枝を広げる社がある。秩父今宮神社には、ペットと一緒にくぐれる茅の輪が年間を通して設けられていて、輪をくぐる犬の後ろ姿に、参拝の人たちの目もやわらぐ。ちりめんの足形をかたどったペット守りは、首輪につけられる小ささ。龍神の御神木に手を合わせたら、長瀞の岩畳まで足をのばすのもいい。 --- 犬のための手水舎 — 神祇大社 伊豆高原の緑のなかに建つ神祇大社には、めずらしいものがある。ペット専用の手水舎だ。石の水盤で前足を清めて、境内へ。犬の顔を描き入れる絵馬が奉納棚にずらりと並ぶ光景は、この社がどれだけ多くの飼い主に愛されてきたかを物語る。愛犬の健康を祈って絵馬を掛けたら、大室山や城ヶ崎海岸へ、伊豆の一日がはじまる。 --- 朱の本堂と、ペットお守り — 犬山成田山 名前に「犬」を宿す街、愛知・犬山。その高台に朱塗りの本堂を構える犬山成田山は、リードをつけて広い境内を参拝できる。授与所にはペットのためのお守りが六種。たて型、よこ型、紐型と、うちの子に合うかたちを選べるのがうれしい。本堂前から見下ろす犬山の城下町の眺めも、ここまで登ってきた足への、ささやかなご褒美だ。 --- 月に二度の、幸せおまいり — 一畑山薬師寺 愛知・岡崎の山あいに建つ一畑山薬師寺は、ペットと一緒に参拝できるだけでなく、月に二度「ペット幸せおまいり」という祈祷会を開いている。本堂に向かって並ぶ犬たちと、その隣で手を合わせる飼い主たち。にぎやかなようで、どこか厳かなその時間は、家族の一員としての「うちの子」を、あらためて確かめる時間でもある。 --- 神々の集う杜へ — 出雲大社 旅の終わりは、島根・出雲。縁結びの神様として名高い出雲大社は、リードを着けていれば愛犬と境内を歩ける、全国でも貴重な大社だ。松並木の参道を、犬とゆっくり進む。大しめ縄の前で立ち止まり、そっと頭を下げる…